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「ノイズの種類が分からない」人が最初に理解すべき技術プロセス

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目次

■はじめに:

ノイズ対策の“本当の難しさ”は分類そのものにあるのではなく、
何が原因で、どの操作に反応するのかが分からない状態
にあります。

EMC相談を受けていても、多くのエンジニアが最初に口にするのはこの言葉です。

「そもそも、これって放射なんですか?伝導なんですか?」

実はこの質問自体が、EMC初心者がつまずく最大のポイント。
なぜなら、ノイズは本質的に 放射と伝導が相互に影響し合う現象 だからです。

ノイズは単純に二分できません。
しかし、実務で問題になるのは「区分の精度」よりも
“再現性のある判断プロセス” を持つかどうかです。

この記事では、

  • 初心者が最初に理解すべき理論
  • 測定器なしで行える再現性のある操作
  • 判断のためのチェック体系
  • 対策指針を選ぶロジック
    をまとめて解説します。

■1. ノイズの基礎:なぜ分類が難しいのか

ノイズは、
「発生源」→「結合経路」→「影響先」
という3つの要素で成立します。

この3つはいずれも放射・伝導の両面を持つため、以下のような状態が普通に起こります。

  • 伝導ノイズがケーブルを介してアンテナ化 → 放射ノイズとして観測
  • 放射ノイズが基板配線に混入 → 伝導ノイズのような誤動作
  • 電源ラインのノイズがGND経由で空間へ放射

つまり、
どちらか一方の問題として割り切るのは本来難しい
ということです。

ところが実務では、その複雑さをすべて扱う必要はありません。
必要なのは 「どちらが支配的か」 を判断できることです。


■2. 放射ノイズと伝導ノイズの本質的な違い

教科書的ではなく、実務で使うべき違い だけを整理します。


●放射ノイズ:空間を媒介する電磁界の問題

特徴:

  • ケーブル・筐体など“アンテナ性”のある構造で強くなる
  • ループ面積・線の長さに依存
  • 手で触る、金属に近づけると変化
  • 近距離で顕著な影響が出る
  • シールド・導通改善が効果的

放射ノイズの正体は
「意図しないアンテナ」
という表現が最も近い。


●伝導ノイズ:導体を通る電流の問題

特徴:

  • 電源ライン/GND配線/信号線のインピーダンスで決まる
  • 電源種を変えると変化
  • LCフィルタが効く
  • ループ面積よりも“インピーダンスの高さ”が支配的
  • USB経由やDCラインでトラブルが多い

伝導ノイズは本質的に
“インピーダンスに押し出された電流の暴れ”
だと捉えると理解しやすい。


■3. 切り分けの第一原則:再現性を支配する変数を見つける

ノイズ問題で最も重要な工程は、
“現象を支配している変数”を特定する
ことです。

ここが曖昧だと

  • 部品を大量購入
  • 対策をやっても効果が不明
  • 原因が絞れない
    という“闇雲な対策ループ”に陥ります。

支配変数の探索には、
操作 → 反応 → 変化量の観察
というシンプルな方法が最も有効。

高度な測定器を使った解析よりも、
まずは“反応の出る方向性”をつかむほうが圧倒的に早いです。


■4. 初心者が最初に行うべき“操作的切り分け手法”

ここからは、測定器無しで出来、
技術者が読んでも納得できる精度の方法を解説します。


▼操作1:ケーブルの長さ・配線経路を変える

ケーブルは最も強力な“アンテナ”です。

変化の量に注目します。

  • ケーブルを10cm短くする
  • 折り返しの向きを変える
  • ケーブルを束ねる/広げる
  • シールドケーブルに交換
  • わざとループを作る

反応が強い場合

→ 放射ノイズ優位

ほぼ変わらない場合

→ 伝導ノイズ寄り


▼操作2:電源を変える

伝導ノイズは電源インピーダンスの影響を強く受ける。

  • スイッチング電源A → B
  • スイッチング → リニア
  • USB給電 → モバイルバッテリー
  • PC USBポート変更
  • ハブ有無の切り替え

電源変更で変わる現象はほぼ例外なく
伝導ノイズが支配している


▼操作3:金属・GND面に近づける

放射ノイズは“空間経由”なので、
周囲の金属環境でレベルが大きく変わる。

  • アルミ板に置く
  • シャーシ部と接触させる
  • 逆に離す
  • 手で触る

変動が大きいほど
→ 放射ノイズ支配


▼操作4:GND構造の強化

伝導ノイズはGNDインピーダンスが鍵。

  • GND配線を追加
  • ネジ固定点を増やす
  • シールドとGNDを一点/多点で切り替え
  • GND面に追加パターンを当てる

反応が強ければ
→ 伝導ノイズ


■5. “点数化”による半定量的な分類(精度を上げる方法)

曖昧に判断しないために、
点数で分類する方法 が有効。


▼放射ノイズっぽい項目(各1点)

  • ケーブル長・曲げで大きく変わる
  • 金属に近づけると顕著に変わる
  • 手で触ると変わる
  • 配線の取り回し変更で改善/悪化
  • 無線機器の距離で変わる
  • 筐体の開閉でレベルが変わる
  • ケーブルを外すと現象が消える

4点以上 → 放射優位


▼伝導ノイズっぽい項目(各1点)

  • 電源変更で挙動が変化
  • USBハブで改善
  • ノイズフィルタで顕著に効く
  • GND構造の変更で変化する
  • 電源ON/OFFで再現性が高い
  • ケーブル長ではほぼ変わらない
  • 電流変動の大きいタイミングで再現

4点以上 → 伝導優位


■6. 放射ノイズ対策 ― 実務で使うべき優先順位

放射対策は“アンテナ性を減らすこと”が本質。

(1) ループ面積の削減

最重要。
電流ループは“電磁界の湧き出し口”なので、
面積を1/2にすればノイズは単純に減衰する。

ループ面積を1/2にするというのは単純に電源線や通信線を短くするって覚えておけば大丈夫です。

(2) ケーブルのシールド化

シールドの有無で20~40dB単位で違うケースも普通にある。

基本はシールドが良いですが、両端接地出来ない場合は逆にシールド部分がアンテナになり
悪化するケースがありますので製品の最終仕様をどうするかによります。

(3) フェライトコア

高周波帯域でのノイズ減衰が強い。
素材(Ni-Zn / Mn-Zn)を使い分けるのが理想。

フェライトコアの簡単な記事も作成しているので合わせて見て下さい!!

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(4) 筐体導通の確保

  • 導電ガスケット
  • 塗装剥離
  • 導体ネジのトルク管理

放射対策の多くは 構造対策 が主役。

大体の製品は塗装がしてあるので、ここは問題になりやすい場所です。
過去にあったのは、筐体と蓋の塗装を剥がして導通をさせると
0.15M-30MHzの伝導ノイズ測定でのノイズが激減したことです。
良く筐体の隙間はスロットアンテナになるとかは言われるのですが、
低周波領域でも効果はありますね。主に低周波はGNDが良く効きますから
伝導で色々対策しても落ちない場合は筐体の導通を疑っても良いかもしれないですね。


■7. 伝導ノイズ対策 ― 電源/GNDインピーダンスに着目

伝導対策は“電流の流れやすさ”を整える作業。

(1) LCフィルタ

  • 共振周波数の設計
  • Lは飽和電流に注意
  • Cは高周波損失の小さいタイプを使用
  • π型フィルタの効果が高いケースも多い

フィルタは大体の製品で使用されているので問題ないと思われる方が多いと思いますが
意外な落とし穴になるケースもあります。
よくあるのが、L値の定数が低すぎるケースですね。
対策したい周波数に対してL値が低すぎて全然インピーダンスが稼げていないことがあります。
フィルタ定数はEMC対策の定番ですが、これをやりだすと滅茶苦茶時間がかかりますので
後回しにするケースが多いですね(笑)
まずは、簡単な対策からが基本です。

(2) GND構造

伝導ノイズの多くは GNDインピーダンスの設計が不十分 で起こる。

  • GNDは必ず面化
  • 帰還電流の経路を明確に
  • 基板多層化時はGND層配置が最重要
  • シールドGNDとの接続方法を慎重に選ぶ

(3) ケーブルインタフェースのアイソレーション

  • USBアイソレータ
  • 絶縁DC-DCコンバータ
  • コモンモードチョーク追加

注目したいのがコネクタのGNDです。
大体製品を見ているとGNDの接続が弱い場合が多いです。
コネクタはノイズの入口、出口になりますからここのGND設計は十分に見たほうが良いです。


■8. 実務で特に多いトラブル例と分類

▼例1:USB接続時だけ誤動作

→ 8割以上が伝導ノイズ

USBの5V/GNDインピーダンスの影響が大きい。

USBの接続先の機器から伝導ノイズが来て誤動作するパターンですね。
被害側のインピーダンスが高ければ誤動作しないかもしれないですが、そこは環境にもよるので時と場合によります。大人しくフェライトコアを巻きましょう。


▼例2:機器同士の距離を変えると症状が変わる

→ 放射ノイズほぼ確定

距離依存 = 空間を介した結合。

あんまりこういったケースは少ないかもしれませんが、無くはないです。
機器の間に金属板や吸収シートをおいたり、物理的距離を離したり、機器単体の対策をしたりと
アプローチを多くあります。大体は要望を聞いて対策するケースが多いです。



▼例3:筐体のネジを締めると症状が消える

→ 放射ノイズ寄り

シールド性能の変化が効いている。

これもよくあるパターンですね。
ネジのトルク具合で筐体のGND接続(インピーダンス)が変化して放射ノイズが出たり出なかったりします。
こういう場合はネジのトルク管理や、導電性のガスケットでGND接続の部分を増やすのがベターです。
ガスケットが使用できない場合はネジ締め部分を多くして共振周波数を高周波側に移動させるのも手です。


■9. 結論:分類は“目的”であり“ゴール”ではない

大切なのは
放射と伝導のどちらが支配的かを判断し、
対策優先度を決められる状態にすること。

そのためには

  • ケーブル
  • 電源
  • 金属
  • GND
    の4つの操作だけで十分。

ノイズは複雑ですが、
この4操作と点数化による判断を行うだけで
実務での切り分け精度は一気に上がります。

ここまで読んで頂きありがとうございました!!

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