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ノイズの発生について

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〜EMCを理解するための次の一歩〜

前回の記事では、「EMC(電磁両立性)とは何か」について解説しました。
今回はその続きとして、ノイズはそもそもどこから発生するのかという点を整理していきます。

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ノイズ対策というと、

  • とりあえずフェライトコアを付ける
  • シールドを強化する

といった対処から考えがちです。
しかし、実際の設計や評価の現場では、
ノイズの発生源を理解しているかどうかで、対策の精度が大きく変わってきます。

この記事では、ノイズを次の2つに分けて説明します。

  • 自然ノイズ
  • 人工ノイズ

EMCを考えるうえでの土台として、まずはノイズの正体を整理していきましょう。


目次

そもそもノイズとは?

ノイズとは、本来扱いたい信号や装置の動作に対して、
不要だったり邪魔になったりする電気的・電磁的な成分のことを指します。

ここで大切なのは、
ノイズは「異常なもの」ではなく、ごく普通に存在するものだという点です。

電子回路を使う以上、ノイズの発生を完全に避けることはできません。
EMC設計とは、ノイズをゼロにすることではなく、
問題にならないレベルまで抑えることだと考えると分かりやすいです。


自然ノイズ

まずは、人間が特別なことをしなくても自然に発生するノイズから見ていきます。

熱雑音(サーマルノイズ)

熱雑音は、抵抗の中を流れる電子が、
熱によってランダムに動くことで発生するノイズです。

温度がある限り必ず発生するため、
電子回路では避けられないノイズの代表例と言えます。

主な特徴は次の通りです。

  • 温度が高いほど大きくなります
  • 抵抗値が大きいほど増えます
  • 観測する周波数帯域が広いほど増えます

特に、センサ入力や微小な信号を扱う回路では、
この熱雑音がそのまま性能に影響することも少なくありません。


増幅器雑音

オペアンプやトランジスタなど、
能動部品そのものが発生源になるノイズもあります。

増幅器雑音には、

  • ショット雑音
  • 1/fノイズ(フリッカーノイズ)

などがあり、回路の種類や周波数帯によって、影響の大きい成分が変わります。

特に低周波領域では1/fノイズが目立ちやすく、
アナログ回路では無視できない存在になります。

このようなノイズは、

  • 部品の選び方
  • 回路構成
  • 帯域を必要以上に広げない設計

といった工夫で、ある程度抑えることが可能です。


静電気放電(ESD)

静電気放電は、日常生活でもよく体験するノイズです。

ドアノブに触れた瞬間の「バチッ」という放電は、
電子機器にとってはかなり厳しい現象になります。

ESDの特徴としては、

  • 非常に高い電圧が発生
  • 立ち上がりが非常に速い

といった点が挙げられます。

一瞬の出来事ですが、誤動作だけでなく、
場合によってはICや部品の破壊につながることもあります。
そのため、ESDはEMC試験でも重要な評価項目になっています。


雷放電

自然ノイズの中で、特に規模が大きいのが雷です。

雷が発生すると、

  • 非常に大きな電流
  • 強い電磁界

が一気に発生します。

直接雷が落ちなくても、
電源線や通信ケーブルを通じて影響を受けることがあります。
屋外設備や長距離配線を持つ装置では、特に注意が必要です。

上記の事を誘導雷と呼びます。直撃雷よりも発生頻度が高く、広範囲に影響を及ぼします。
アンテナ給電線、電源線などのケーブル経由で家庭内やオフィス内の様々な電子機器に過渡ノイズが侵入します。そういったノイズの侵入を抑えるために雷サージ対策の電源タップ等があります。
※基本的に電化製品はバリスタやツェナーダイオード等で対策はしていると思いますが、想定よりも高いレベルだったら普通に故障はします。


人工ノイズ

次に、人間が作り出した装置や回路が原因となるノイズを見ていきます。
実際のEMCトラブルでは、こちらが原因になるケースが非常に多いです。


負荷ノイズ

モータやリレー、ソレノイドなどの負荷をON/OFFすると、
その切り替わりの瞬間にノイズが発生します。

特に誘導性の負荷では、

  • 電流を遮断した瞬間に高電圧が発生します
  • 電源ラインにスパイク状のノイズが乗ります

といった現象が起こりやすくなります。

このノイズが他の回路に回り込むと、
誤動作の原因になることがあります。


放電ノイズ

リレーの接点やブラシ付きモータでは、
目に見えない小さな放電が発生しています。

この放電は、
広い周波数帯にわたるノイズを出すのが特徴です。

そのため、

  • 伝導ノイズ
  • 放射ノイズ

の両方の原因になることも珍しくありません。

放電ノイズは問題になることが多く、民生、車載品等多岐に渡ります。また、細かい振動波形(シャワリングアーク)が多いので測定が安定しなかったり、誤動作が発生している場合は再現が全然取れないなどもあります。ブラシレスモータを使用する場合もありますが、コストの兼ね合いでブラシモータが使用されるケースも多いです。(EMC的には非常に面倒ですね(笑))


無線による妨害

Wi-FiやBluetooth、携帯電話など、
現在の環境は常に電波で満ちています。

これらは正規の通信信号ですが、
対象となる機器から見ると外来ノイズとして影響することがあります。

特に、

  • アナログ回路
  • 高インピーダンスな回路
  • 配線やケーブルが長い装置

では、無線の影響を受けやすくなります。


デジタル信号による妨害

最近のEMC問題で、特に重要なのがこの点です。

クロック信号や高速データ信号は、
設計者にとっては必要不可欠な「信号」ですが、

  • 立ち上がりが非常に速い
  • 高周波成分を多く含む

という理由から、強力なノイズ源にもなります。

ある回路では信号でも、
別の回路から見るとノイズになることがあります。
これが、EMC設計を難しく感じさせる大きな理由の一つです。


まとめ

今回は、ノイズの発生源を

  • 自然ノイズ
  • 人工ノイズ

という形で整理しました。

ノイズ対策を考えるときは、
まず「どこでノイズが発生しているか」を意識することが重要です。

EMCは難しそうに見えますが、
一つずつ整理していくと、意外と理解しやすい分野でもあります。

ここまで読んで頂きありがとうございました!!

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