【初心者向け】EMC試験に欠かせないアッテネータとは?

EMC

皆さんこんにちは!!

アッテネータという言葉は、普段の生活ではまず耳にしませんよね。
でも、EMCの測定現場ではとても大切な役割を担っています。見た目はただの金属の筒のようですが、これがあるかないかで試験の安全性や精度が大きく変わってくるんです。

この記事では「アッテネータって何?」「なぜ必要なの?」という基本から、種類や使うときの注意点までを初心者向けにわかりやすく紹介します。


アッテネータってどんなもの?

アッテネータとは、信号を「小さくする」ための部品です。
電気の世界では強すぎる信号が入ると、測定器が壊れてしまったり、正しく動かなくなることがあります。そこで間にアッテネータを入れて、あらかじめ信号を弱めるのです。

信号をどれだけ小さくするかは「dB(デシベル)」という単位で表します。
例えば10 dBのアッテネータを入れると、電力で見ると信号は10分の1に、電圧で見ると約3分の1に弱まります。3 dBなら電力で1/2、電圧で約0.7倍、6 dBなら電力で1/4、電圧で1/2です。

つまりアッテネータは「水道の蛇口を少し閉めて、水の量を減らす」ようなイメージの部品なんですね。

EMCの世界では、dBµVベースで規格の合否判定をすることが多いです。
そのため、例えば100 Vといった大きな電圧が直接測定器にかかると、一瞬で壊れてしまいます。アッテネータはそのような過大入力から測定器を守る役割も担っています。


EMC試験でアッテネータが必要な理由

EMC試験では、電源やアンテナから出てくるノイズを測定器でチェックします。ところが、そのノイズは時にとても強力で、直接つなぐと測定器が壊れてしまう危険があります。

そこでアッテネータが登場します。役割は大きく3つです。

  1. 測定器を守る
    強すぎる信号を弱めて、安全に測定器に入力できるようにします。
  2. 測定を安定させる
    ケーブルや機器のつなぎ方によっては、信号が反射して測定値が揺らぐことがあります。アッテネータを入れると、その反射を減らせるので安定した測定が可能です。
  3. 再現性を高める
    EMC試験では「昨日と今日で結果が違う」のは困ります。アッテネータを使うと、ノイズや環境の影響が減り、再現性の高いデータが取れるようになります。

例えば伝導エミッション試験では、LISN(疑似電源回路網)と測定器の間に10 dBのアッテネータを入れるのが一般的です。これにより測定器を壊さず、安定した測定ができます。

※他にもVSWR(電圧定在波比)など厳密な規定はありますが、初心者の方はまず上記3つを覚えておけば十分です。


アッテネータの種類

アッテネータと一口に言っても、いくつか種類があります。

  • 固定式アッテネータ
    常に一定の減衰量(3 dB、6 dB、10 dBなど)を持つタイプ。シンプルで信頼性が高く、EMC試験でよく使われます。
  • 可変式アッテネータ
    ダイヤルを回して減衰量を変えられるタイプ。柔軟ですが、固定式よりは少し精度が落ちることがあります。
  • 高周波対応型
    EMCでは1 GHz以上の周波数を扱うこともあります。対応周波数を必ず確認してから使いましょう。
  • 高耐入力型
    大きな信号を入力しても壊れにくい設計のもの。送信機やパワーアンプを使う試験では重要です。

固定式は精度が良く使いやすいものが多いですが、耐電力は1 W程度のものが多く、過大入力で焼損するリスクがあります。また、メーカーによっては精度が公称値とずれることもあります(例:3 dBのはずが2.8 dBなど)。

高周波対応型はGHz帯での測定には必須です。初心者の方が対応していないアッテネータを誤って使うと、ミスマッチで定在波が発生し、測定品質に悪影響を与えるので注意が必要です。

高耐入力型は耐電力が5 W、10 W、20 Wといった仕様があり、最近のインバータ機器では1 Wクラスのアッテネータを簡単に焼損させることもあります。選定時は必ず耐入力を確認しましょう。


アッテネータを選ぶときのポイント

初心者がEMC試験用にアッテネータを選ぶときは、以下の点を意識すると安心です。

  • 周波数帯域:測定対象の周波数まで対応しているか
  • 最大入力電力:信号源がアッテネータの耐入力を超えないか
  • コネクタ形式:N型、SMA型など、測定器やケーブルに合っているか

使うときの注意点

アッテネータは便利ですが、万能ではありません。

  • 減衰量を大きくしすぎると、ノイズが小さすぎて見えなくなる
  • 複数を直列に使うと、信号が弱まりすぎて測定できないことがある
  • 高周波では理論通りの減衰にならないことがある
  • 長期間の使用でコネクタが摩耗し、性能が落ちることがある

また、不具合を見逃さないために、最低でも年に1回は校正を実施することをおすすめします。


まとめ

アッテネータは小さな部品ですが、EMC試験ではとても重要な役割を果たします。

  • 強すぎる信号から測定器を守る
  • 測定を安定させる
  • 再現性を高める

このような理由から、EMC試験では必ずといっていいほど使われています。

「ただ信号を弱めるだけ」の部品ですが、そのおかげで安全かつ正確な測定が可能になります。初心者の方も、まずは3 dBや10 dBの固定アッテネータを手に取り、実際に試験で使ってみると理解が深まるはずです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!!

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