皆さんこんにちは( ^_^)/
今日は、普段の生活ではまず耳にしないであろう 「電波暗室」 についてご紹介します。
EMC業界では欠かせない施設ですが、一般の方にとっては「なんだか真っ黒な部屋?」「研究所みたいな場所?」というイメージかもしれません。
そこで今回は、初心者の方にもわかりやすく、電波暗室の役割や仕組み、実際の使われ方などを解説していきます。
※初心者向けに分かりやすくざっくりと書いているので、詳細な歴史とかは記載しません。
気になる方がいたら色々なサイトを調べて下さいね。
電波暗室とは?
電波暗室とは、簡単に言えば 外部からの電波を完全に遮断した部屋 のことです。
壁や天井、床には「電波吸収体」と呼ばれるピラミッド型のスポンジのような素材がびっしり敷き詰められています。
※EMCについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
厳密には、金属製のシールドルームの内側に電波吸収体を敷き詰めている構造になっています。
この吸収体が室内で反射する電波を吸収してくれるため、まるで「外の電波が一切届かない真空状態」のような環境を作ることができます。
例えるなら、電波版の防音室。外部の音を遮るのではなく、外部からの電波をシャットアウトしているわけです。
電波暗室は何のために使うの?
電波暗室は主に EMC試験(電磁両立性試験) のために使われます。
EMCとは「電気・電子機器が他の機器に電磁的な妨害を与えず、また周囲の電磁環境からも影響を受けにくい能力」のことです。
例えば次のような製品が対象です。
- 家電製品(電子レンジ、テレビ、冷蔵庫、エアコン)
- パソコンやスマートフォン
- 車載機器(カーナビ、エンジン制御ECU、ドライブレコーダー)
これらはすべて 「他の機器に悪影響を与えないこと」 が法律や規格で求められています。
その確認を行う場所が、電波暗室なのです。
昔は屋外の「オープンサイト」と呼ばれる場所(山奥など)で測定をしていました。
しかし、無線機器の普及や地デジ放送の影響で、屋外では不要な電波を拾ってしまい、正確な測定が難しくなりました。
そこで「オープンサイトを模擬できる環境」として次第に電波暗室に置き換わっていったという経緯があります。
電波暗室で行う試験の種類
電波暗室では大きく分けて2種類の試験が行われます。
エミッション試験
製品から出る電磁ノイズを測定する試験です。
例えば、パソコンから強い電波が出てしまうと、近くのWi-Fiやラジオがノイズだらけになる可能性があります。
こうした妨害がないかを確認します。
イミュニティ試験
逆に、外部から強い電波を当てて、その製品が誤作動しないかを確認する試験です。
例えば、自動車の電子制御装置が携帯電話の電波で誤作動したら大事故につながります。
そのため「外部から電波を浴びても安全か?」を調べる必要があります。
この他にも細かい試験項目は数多くありますが、ここでは代表的な試験を紹介しました。
電波暗室の種類
一口に電波暗室といっても、いくつか種類があります。
- 全電波暗室
壁・天井・床すべてに吸収体を敷き詰めた部屋。
電波の反射がほぼゼロで、理想的な測定環境が得られます。 - 半電波暗室
床は導電板(グラウンドプレーン)で、壁と天井だけ吸収体を設置した部屋。
床の反射を利用した測定もできるため、EMC試験でよく使われます。
一般的なEMC試験は半電波暗室で実施されます。これは、屋外オープンサイトを模擬しているからです。
オープンサイトは四方が開けた空間で、床は地面(または金属板)になっています。
初めて入るとビックリする理由
初めて電波暗室に入ると、多くの人がこう感じます。
- 「壁がトゲトゲしてる!」
- 「真っ暗でちょっと怖い…」
- 「まるで宇宙船の中みたい」
実際、部屋全体が青や黒の吸収体で覆われていて、独特の雰囲気があります。
また、外部の音もほとんど入ってこないので、静けさに驚く人も多いですね。
最近では、吸収体に白色の発泡スチロールをつけて、部屋全体を明るくしている施設も増えています。
EMC技術者のあるある
実際に電波暗室で働いていると、こんな「あるある」に出会います。
- 長時間こもると時間の感覚がなくなる
- 試験中は待ち時間が長いので、お客さんと雑談することが多い
- 暗室に入ったまま資料や規格書を取りに出るのを忘れる(笑)
これは本当によくあります。電波暗室には窓がないので、外の状況は全くわかりません。
長い試験では雑談が必須になりますし、「資料を忘れた!」という経験は技術者あるあるですね。
初心者がまず覚えておきたいこと
「電波暗室って何?」と思う方もいるかもしれませんが、初心者向けにまとめるとこんな感じです。
- 電波暗室=外部電波を遮断した試験室
- EMC試験に必須の施設
- 家電やスマホ、車載機器もここで試験されている
- 見た目は独特だけど、やっていることは「測定と確認」だけ
まずはこのイメージさえ持っておけば十分です。
そこから興味を持ったら、エミッション試験やイミュニティ試験などの詳しい仕組みに進んでみましょう。
まとめ
今回は初心者向けに 電波暗室とは何か をご紹介しました。
- 電波暗室は「外部電波を遮断して正確に測定する部屋」
- EMC試験(エミッション・イミュニティ)で必須
- 家電・スマホ・自動車など、身近な製品すべてがここで試験されている
- 初めて見ると不思議だけど、実際はただの試験室
私たちが普段安心して使っている製品の多くは、こうした施設と技術者の努力によって支えられているのです。
今日もご覧いただきありがとうございましたm(_ _)m
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