はじめに:電子機器に潜むノイズの脅威
電子機器を日常で使っていると、「ジジジッ」と不快な音が聞こえたり、通信が途切れたりすることがあります。これらは ノイズ(電磁干渉、Electromagnetic Interference: EMI) が原因です。ノイズは目に見えませんが、電子回路や通信機器の動作に直接影響を与えます。
ノイズが発生すると以下のようなトラブルが起こることがあります:
- 電子回路の誤動作やセンサーの誤検知
- パソコンやスマホなどの通信エラー
- 音響機器での雑音発生
- 他の電子機器への干渉
こうした問題を防ぐために、製品設計や電子工作の現場では ノイズ対策 が欠かせません。初心者でも簡単に取り組める方法のひとつが フェライトコアの活用 です。
フェライトコアは、ケーブルに通すだけでノイズを吸収し、電子機器の安定動作を助ける非常に便利なアイテムです。本記事では、初心者でも理解しやすく、実践しやすい内容でフェライトコアの基本から応用までを解説します。
ノイズの基礎知識
ノイズは目に見えませんが、電子回路内では信号を乱す強力な影響力を持っています。
まずは、ノイズの種類を理解しましょう。本記事では 「放射ノイズ」と「伝導ノイズ」 に限定して解説します。
放射ノイズ(Radiated Noise)
- ケーブルや回路から空間に向かって放射されるノイズ
例:パソコン内部のスイッチング電源、電子工作の高周波信号 - 周囲の電子機器に干渉する原因になる
フェライトコアは、ケーブルが空間に放射する高周波ノイズの一部を吸収することで、誤動作や雑音を軽減します。
伝導ノイズ(Conducted Noise)
- 電源線や信号線を通じて伝わるノイズ
例:ACアダプタやUSBケーブルを経由して電子機器に侵入するノイズ - ケーブル伝導による機器内部の誤動作や通信エラーの原因
フェライトコアは、こうしたケーブル伝導ノイズを吸収し、回路への影響を減らすことができます。
発生源の具体例
- パソコン内部のスイッチング電源
- ACアダプタや充電器
- モーターや冷却ファン
- 無線機器やWi-Fiルーター
ノイズは目に見えませんが、電子回路内では信号を乱す強力な「影響力」を持っています。
EMC(電磁両立性)とは
ノイズ対策を語るうえで欠かせないのが EMC(Electromagnetic Compatibility) です。
EMCとは、電子機器が周囲の機器や自身に対してノイズを出さず、また周囲のノイズに影響されずに動作できる能力を指します。
EMCを守ることは、以下の意味があります:
- 製品の信頼性向上
- 電子機器同士の干渉防止
- 規格や法規制の遵守
初心者でもまず理解してほしいのは、ノイズ対策は 電子機器を安定して動作させるための基本 ということです。
フェライトコアとは?物理的仕組みの解説
フェライトとは
フェライトは磁性体を焼き固めたセラミック素材で、電磁波を吸収する性質を持っています。
ケーブルにフェライトコアを通すことで、高周波ノイズのエネルギーを吸収し、回路への影響を減らします。
フェライトコアの仕組み
ケーブルを通すだけでノイズの振動を減衰させ、電子機器の誤動作や雑音を防ぐことができます。
フェライトコアのメリット
- 簡単に取り付け可能
- 高周波ノイズを効果的に吸収
- ケーブルや回路の改造不要
フェライトコアの種類と選び方
フェライトコアには様々な種類があります。選び方を知っておくと効果が最大化されます。
1. サイズ
- ケーブルの太さに合ったサイズを選ぶ
- できるだけ肉厚で通す穴が小さいもののほうがインピーダンスが高い傾向にある。
できるだけケーブルに密着した方が良い。小さいとその分インピーダンスが低くなるので効きづらい。
インピーダンスはフェライトコアの形状も影響しているので大きいからと言って
インピーダンスが高い訳では無い。
※ここら辺の話しは数式等も必要になるので今回は省いています。
2. 材質
- 吸収できる周波数帯が異なる
- 「高周波用」「低周波用」と製品に記載
- 家庭用電子機器なら高周波用で十分
低周波(9kHz~30MHz)くらいは主に電源のLCフィルタ等で結構低減している場合が多い。
なので放射ノイズの要因となる高周波(30MHz以上)のノイズをケーブルから放射させないために
挿入した方が良いと思われる。
※高周波はNi-Zn系になります。間違えてMn-Zn系を購入しないように。
もし、考えるのが面倒ならナノ結晶型のコア(厳密にはフェライトではない)を使用すれば広帯域に効果が
あるのでそちらを使用しても良い。ただし、値段は高い。
3. 形状
- 円形タイプ:ケーブルに通すタイプ(トロイダルコアって言うことが多い。)
- 割れコアタイプ:後付けで簡単に装着可能
初心者には割れコアタイプがおすすめ
選び方のポイント
- 使用するケーブルの種類・太さに合わせる
- 周波数帯に応じた材質を選ぶ
- ケーブルに無理なく装着できる形状
フェライトコアの使い方
ケーブル別配置例
- 電源ケーブル
- ACアダプタや充電ケーブルに通す
- ノイズの通り道になりやすいため優先度が高い
- 信号ケーブル
- USBやオーディオケーブルに通す
- 通信エラーや音質劣化の防止に効果
設置のコツ
- 基本は1~2個で十分
- 複数個付けると効果が高まる場合もある
- ノイズ源に近い側に設置するのが効果的
- フェライトコアに対して2~3回巻くと効果が自乗倍になる。
例:2回巻くとフェライトコア4個分の効果
高周波用のフェライトコアでケーブルを巻きすぎるとケーブル同士の容量結合で効果が出る帯域が低周波側に移行し、狙った周波数帯域で対策効果が出ない可能性があります。
実践例:身近な電子機器での使用
1. パソコン周り
- USBケーブルやイヤホンケーブルにフェライトコアを装着
- 高周波ノイズによる「ジジジッ」が軽減
- ケーブルを整理すると効果がより明確
2. Arduino・ラズパイなど電子工作
- 電源ケーブルや信号線に通すだけでセンサー誤動作を防止
- 初心者でも簡単に取り組める
3. 家庭用電化製品
- テレビのアンテナケーブルやACアダプタに設置
- ノイズによる映像や音声の乱れを軽減
効果の体感方法
- フェライトコア装着前後で音や動作の安定性を比較
- 小型電子機器では、センサー誤動作が減ることを確認
トラブルシューティングとFAQ
Q1: 効果が出ない場合は?
- サイズが合っていない
- ケーブルに適切に通っていない
- 低周波ノイズには効果が薄い
低周波用のコアは基本効きづらいです。フェライトコアにケーブルを複数回ターンしてようやく効くレベルなので聞かない場合は巻数を増やすと効果が出るかもしれないです。
Q2: 複数ケーブルに付けてもいい?
- 基本的には1~2個で十分
複数個つけてもいいですが、ターンした方が自乗倍なのでコスト的に安上がりです。
また、フェライトコアをつけたことによりノイズのループが変化しますので余計悪化することもありえます。
日常的な場合は数個で十分です。もしそれでも効かないなら素直に専門家に聞きましょう。
もちろん、私でも大丈夫です(笑)https://notesandwaves.com/contact/
Q3: 家庭用電化製品での注意点は?
- ケーブルを曲げすぎない
- ACアダプタの近くに設置すると効果が高い
ACアダプタは軽視されがちなのですが、あれってACからDCに変換しているのでノイズは出まくりです。
ちゃんとしているメーカーならそこで電源フィルタやフェライトコアを巻いて対応していますが、
安い製品だとちゃんと対策していないのでACアダプターからノイズが出てコンセントに侵入し
周りの家電製品に悪影響を及ぼすケースもあります。
コラム:フェライトコア以外の簡単なノイズ対策
- 配線工夫:信号線と電源線を分離、ループ面積を小さく
- シールド:ケースやケーブルを金属で覆う
- 簡易フィルタ:LCフィルタやフェライトビーズを併用
フェライトコアは単独でも効果がありますが、他の対策と組み合わせるとさらに安定します。
まとめ:初心者が押さえるべきポイント
- ケーブルに通すだけで簡単にノイズ対策が可能
- サイズ・材質・設置位置で効果が変わる
- 身近な電子機器から試すと効果を実感しやすい
まずはケーブルにフェライトコアを付けるだけのシンプルな方法から始め、ノイズ問題を軽減しましょう。
その後、配線工夫やフィルタなどのステップに進むと、より高度なノイズ対策が可能です。
今回は、フェライトコアに絞ってざっくりと分かりやすく解説をしました。
本当は細かく解説したいのですが、初心者ですと躓きますからね(笑)
機会があったら詳細版を挙げましょうかね。
ここまで読んで頂きありがとうございました!!
