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スペクトラムアナライザ入門:RBWとVBWの違いと画面ブレ対策

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はじめに

皆さんこんにちは!!今日はスペアナの躓くポイントに着目します。
私も数ヶ月は悩んだ記憶があります(笑)

EMC試験や無線測定で欠かせない測定器「スペクトラムアナライザ(スペアナ)」。周波数ごとの信号強度を表示するこの機器は、無線機や電子機器の開発、規格試験など幅広い分野で使用されます。しかし、初心者が最初に直面するのが、設定によって表示される波形が大きく変わるという問題です。

特に、RBW(分解能帯域幅)VBW(ビデオ帯域幅) は、波形のブレや見やすさ、さらには測定結果の信頼性に直結する非常に重要なパラメータです。初心者の多くは、この2つの違いを理解せずに適当に設定してしまい、「測定結果が安定しない」「弱い信号が消える」といった状況に悩まされます。

この記事では、初心者でも理解しやすいように、RBWとVBWの基本概念、波形がブレる原因、実務での設定例を含めて丁寧に解説します。

後半には実際の測定画面で解説しますのでぜひ見て下さい。


RBW(分解能帯域幅)とは?

RBWとは、Resolution Bandwidth(分解能帯域幅) の略で、スペアナ内部のフィルタ幅を指します。簡単に言うと、どのくらい細かく信号を見分けられるかを決めるパラメータです。

  • RBWを狭くする → 信号を細かく分離できるが、測定速度は遅くなる
  • RBWを広くする → 測定は速いが、近接する信号が重なり、正確なピーク値が読み取りにくくなる

初心者向けの例えで言えば、RBWは「写真の解像度」のようなものです。解像度が高ければ細かい部分まで見えますが、データ量が増える分処理時間もかかります。逆に解像度を下げると、大まかな形はわかるけれど細かい部分はつぶれてしまいます。

さらに、RBWを狭く設定するとノイズフロア(背景ノイズ)の影響が大きくなる場合があります。微弱信号を検出したいときはRBWを狭くしますが、強い信号をざっくり測定する場合は広く設定することが多いです。


VBW(ビデオ帯域幅)とは?

VBWとは、Video Bandwidth(ビデオ帯域幅) の略で、表示される波形の滑らかさを調整するフィルタです。波形の揺れやノイズを平均化して、画面表示を見やすくする役割を持っています。

  • VBWを狭くする → 波形が滑らかになり、ピークやトレンドを読み取りやすくなる
  • VBWを広くする → リアルタイム性は高いが、波形が揺れやすくブレて見える

初心者向けに言えば、VBWは「写真にかけるぼかしフィルタ」のようなものです。ノイズや揺れを少し平均化して見やすくする役割があります。逆に、VBWを広くすると、細かい揺れまでリアルタイムで表示されますが、視認性が低下します。


RBWとVBWの違い

RBWとVBWはどちらもフィルタですが、役割が大きく異なります。

項目RBW(分解能帯域幅)VBW(ビデオ帯域幅)
役割信号の細かさ(解像度)を決める表示波形の滑らかさを決める
測定への影響信号の分離精度やノイズフロア波形の見やすさ
広くすると測定は速いが信号が重なる波形がブレやすい
狭くすると信号は分離できるが測定遅い波形は安定するが平均化される

これを理解していないと、微弱信号が消えたり、画面がブレて正確な測定ができなかったりする原因になります。初心者が最初に躓きやすいポイントです。


測定画面がブレる原因と対策

スペアナで「波形がピョコピョコ動く」原因は主に3つです。

  1. RBWが広すぎる
     → ノイズが多く拾われ波形が荒れる
     → ✅ 対策:RBWを狭くする
  2. VBWが広すぎる
     → 表示がリアルタイムすぎて波形が揺れる
     → ✅ 対策:VBWをRBWの1/10に設定する
  3. 信号自体が変動している
     → デジタルノイズやスイッチング電源の影響
     → ✅ 対策:Max HoldやAverage機能で波形を安定化する

さらに、RBWとVBWの組み合わせ次第では、測定時間や精度にも影響します。初心者が陥りやすい失敗として、「RBWを狭くしたのにVBWを広くしてしまい、波形がブレてしまう」というケースがあります。必ず VBWはRBWの1/10程度 に設定するのが目安です。


実務での設定例

EMC試験(放射エミッション)

  • RBW: 120 kHz(規格準拠)
  • VBW: 300 kHz

無線機キャリア確認(2.4 GHz帯)

  • RBW: 1 MHz
  • VBW: 300 kHz〜1 MHz

微弱信号探索(開発・研究)

  • RBW: 1 kHz以下
  • VBW: RBWの1/10

これらの設定例はあくまで目安であり、信号の性質や規格に合わせて微調整が必要です。測定器の特性や周囲のノイズ環境によっても最適なRBW/VBWは変わります。


実際の測定例

今から、実際の測定例をお見せします。
何が測定条件として良くないか考えてから見て下さい。

◯9kHz-30MHz
◯RBW:100kHz
◯VBW:100kHz

答えは、測定周波数に対して、RBWの値が大きすぎるでした。

測定周波数が9kHz-30MHzなのに、RBWを100kHzに設定しているため。
100kHzまでのアンノイズが膨れ上がっているのが分かります。

これは、100kHzの測定帯域幅で9kHz-30MHzをスイープしているため
最初の方が測定出来ていないためです。

ちなみに、RBWを大きくするとその分取り込むノイズ量が増えるため図のように
アンノイズが盛り上がっています。
ですので、全体のアンノイズを下げたい場合は、
RBWを小さくするとアンノイズを下げれます。

実際にRBWを1kHzに設定すると下記図になります。

ちゃんと膨れ上がっている所が無くなりましたね。
これなら、ちゃんと測定が出来ます。

ただし注意点として、スイープ時間がとてつもなく長くなりますのでここは注意です。

次は、VBWを実際に活用した図を見て頂きます。

こちらは、1MHzの信号をスペアナに送信している波形になります。
RBW、VBWはともに5kHzです。

次に、VBWを1Hzにした図になります。

アンノイズの波形のブレが無くなっているのが分かりますね。

VBWをRBWよりも小さくすると波形のブレを抑えることが出来ます。
これにより微弱な信号を探すことが可能になるのです。
(普段の測定ではあまり使いませんが、覚えておくと便利です。)

次は、スパンについてお話します。

下は、1MHzの波形です。

そしてこちらは拡大した図になります。

このように手動でノイズを探る場合は、まずは広い周波数帯域で測定をします。
そして、目的のノイズを見つけたらそれにマーカーを合わせて、徐々にスパンを狭めていきます。

そうすることにより、詳細な周波数が確認出来ます。
これを確認した後にレシーバに周波数を入力し、PK,QP,AV値を測定するわけです。

ちなみに、スペアナの測定値はそこまで精度が良くないので
参考レベルに捉えて下さい。
正しい数値が知りたいならレシーバで確認する。
これが必須です。

まとめ

  • RBW = 信号の細かさを決める(解像度)
  • VBW = 波形の滑らかさを決める(読みやすさ)
  • 波形がブレる場合 → 「RBWを狭く」「VBWをRBWの1/10」に設定
  • EMC試験ではRBWは規格値固定、VBWは調整可能

RBWとVBWの関係を正しく理解することで、初心者でも波形を安定して読み取ることができ、測定結果の信頼性が格段に向上します。初めてスペアナを触る人でも、この基本を押さえておけば波形のブレに悩むことは少なくなります。

ここまで読んで頂きありがとうございました!!

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