EMC とは、電気・電子機器が 他の機器に電磁的な妨害(ノイズ)を与えず、また 周囲からの妨害を受けても誤作動せずに本来の機能を発揮できる能力 のことを言います。
EMCを構成する2つの要素
EMCは大きく EMI と EMS に分けられます。
EMI(電磁干渉:Electromagnetic Interference)
- 「自分から出すノイズ」
- よく言われる放射エミッションや伝導エミッションのことです。
- 例えるなら、大音量で音楽を流すと周囲に迷惑をかけますよね。
EMIはその“自分が発する音(=電磁波)”だと考えると分かりやすいです。
EMS(電磁感受性:Electromagnetic Susceptibility)
- 「外部ノイズに対する耐性」
- 例えば、大きい音に慣れている人は平気だけど、慣れていない人は疲れてしまうことがあります。
EMSはその“耐える力”にあたります。
EMCとはつまり?
簡単にまとめると…
- EMI → 出す側のマナー
- EMS → 受ける側の体力
この両方をバランスよく持っている状態こそが EMC(電磁両立性) です。
EMCとは、周囲に迷惑をかけないように“静かにする力(EMIの低減)”と、
周囲が少し騒がしくても“自分は動じない力(EMSの耐性)”を兼ね備えた状態のこと。
EMCの測定とは?
EMCを評価するときには、大きく EMI(電磁干渉) と EMS(電磁感受性) の2つを試験します。
EMI(電磁干渉)の測定
- 目的:機器から“出ていくノイズ”が規格値以内に収まっているかを確認する。
- 場所:外部からの電波が入らない 電波暗室 で実施。
- 方法:アンテナや受信機を使い、機器から放射される電磁波やケーブルを伝わるノイズを測定。
- 周波数帯域の例:
- 伝導エミッション:150kHz〜30MHz
- 放射エミッション:30MHz〜6GHz
- 規格:CISPRやISOなどで定められた 許容値 と比較。
EMS(電磁感受性)の試験
- 目的:機器が“外からのノイズ”に対してどれだけ耐えられるかを確認する。
- 試験例:
- 静電気試験(ESD):人の指から放電するような静電気を印加し、誤作動しないか確認。
- 放射イミュニティ試験:外部から強い電波を照射し、誤作動が起きないか確認。
- 伝導イミュニティ試験:ケーブルを通じてノイズを注入し、影響を受けないか確認。
EMC測定のイメージ
- EMI → 「自分が出す音量が大きすぎないか」をチェック。
- EMS → 「周囲がうるさくても自分が冷静でいられるか」をチェック。
どちらも規格に基づいて試験され、両方をクリアすることで 他の機器に迷惑をかけず、かつ周囲からの影響にも強い機器 と認められます。
EMC測定はまさに「人間の健康診断+ストレス耐性テスト」のようなもの。
出す側と受ける側、両方の観点からチェックすることで、機器の“健全さ”が保証されます。
※EMCを知らない方向けにざっくりまとめています。
民生規格や車載規格など多岐にわたるため、このページに全てまとめるのは難しいです。
暇があれば規格ごとに解説記事を追加していくかもしれません。
EMC技術者とは?
EMC(電磁両立性)に関わるエンジニア のことを、ここでは「EMC技術者」と呼びます。
所属先によって得意分野や知識の広さに特徴があります。
1. メーカー所属のEMC技術者
- 特徴:自社の製品(テレビ、車載機器、家電など)に特化して対策を実施。
- 強み:その製品の構造や特性に精通している。
- 弱み:対象が限られるため、知識が特定分野に偏りやすい。
2. 試験所所属のEMC技術者
- 特徴:顧客製品を持ち込んでもらい、規格に沿った試験を実施。
- 強み:民生規格、車載規格など幅広い規格に詳しい。
- 弱み:基本的には「試験」がメインで、設計対策の経験は少なめ。
3. 試験所を持つメーカーのEMC技術者
- 特徴:自社の試験施設で評価・対策を一貫して実施。
- 強み:試験もできるし、設計・対策の引き出しも多い。
- メリット:経験の幅が広く、柔軟な対応が可能。
まとめ
- メーカー系:特定製品に強いスペシャリスト。
- 試験所系:規格に精通したルールのプロ。
- 試験所を持つメーカー系:試験も対策もこなすオールラウンダー。
同じ「EMC技術者」でも立場によって経験や知識の広がりが違うのが面白いところです。
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